
概要
豆乳はそのまま飲料とされるほか、凝固剤を加えて豆腐に加工したり、穏やかに加熱して湯葉を作ったりすることができる。ただし、豆腐用豆乳と飲用豆乳では製法や性質に違いがある。
- 豆腐用豆乳
- 大豆を浸漬した後、常温磨砕し、その後に搾汁や加熱の工程を経て作られる。吸水した大豆を磨砕したものを生呉というが、生呉を搾汁した後で生豆乳のみを加熱する方法を生しぼり法(生しぼり豆乳)、生呉を加熱してから搾汁を行う方法を加熱しぼり法(煮取り法、加熱しぼり豆乳)という。これににがりを加えて凝固させると豆腐となる。なお、搾汁によって豆乳から分離したものがおからであり、食物繊維が多く含まれている。
- 飲用豆乳
- 大豆を浸漬した後、加熱磨砕し、搾汁し(おからを分離)、加熱殺菌して無菌充填したものである。豆腐用豆乳とは異なり、僅かなにおい成分でも豆臭として知覚されてしまう問題があり、1960年代以降に酵素のリポキシゲナーゼを加熱失活させる工程が考案された。具体的にはコーネル大学で開発された熱水とともに磨砕する加熱磨砕法(コーネル法)や、イリノイ大学で開発された大豆を熱水に浸漬してから磨砕するブランチング法(イリノイ法)がある。
製造工程の改良により様々な豆乳製品が製造され、牛乳を原材料に作られてきた製品を豆乳で作れないか様々な試みがなされている。
豆乳鍋や豆乳グラタン、豆乳シチュー、コーヒー、カフェ・オ・レ、カフェ・ラッテにおける牛乳の代わりに豆乳を用いたメニューも増えている(「ソイラテ」など)。ダイエット食品としては、豆乳クッキーなども販売されている。特に牛乳を豆乳で代用したデザートでは、プリン・ドーナツ・チーズ、アイスクリームなど沢山のバリエーションがある。
各国における豆乳
日本における豆乳
定義
日本農林規格(JAS)による定義(抜粋)は、
| 原材料等 | 豆乳(無調整豆乳) | 調製豆乳 | 豆乳飲料 |
|---|---|---|---|
| 大豆固形分 | 8%以上 | 6%以上 | 4%以上 |
| 大豆たん白質含有率 | 3.5%以上 | 2.8%以上 | 1.7%以上 果実の搾汁の製品に占める重量の割合が5%以上のものにあつては0.9%以上 |
| 食品添加物以外の原材料 | 大豆以外のものを使用していないこと。 | 以下に列挙している物以外の物を使用していないこと。 | 次に掲げるもの以外のものを使用していないこと。 |
| 食品添加物 | 使用していないこと | 次に掲げるもの以外のものを使用していないこと。
|
次に掲げるもの以外のものを使用していないこと。 |
※ 農林水産省『豆乳類の日本農林規格』による。
日本では、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの店頭にも並ぶようになり、無調整の豆乳や豆乳飲料を手に入れることが容易になった。紙パックやプラスチックボトルに入った商品が多く販売されている。豆汁を濾した豆乳を「無調整豆乳」と表記しているものもある。一方、飲みやすい味や香りに調整したものは「調製豆乳(ちょうせいとうにゅう)」と呼ばれている。
豆乳向けに、えぐ味が少ない大豆品種も開発されている(日本の農研機構による「すみさやか」)。
製造販売メーカー
現在は以下の6社が日本市場を多く占めている。
- キッコーマンソイフーズ(旧:紀文フードケミファ)
- マルサンアイ
- ふくれん
- 九州乳業 - みどり豆乳
- 大屋食品工業 - 佐世保豆乳
- 不二製油 - ソヤファーム
その他、豆腐製造メーカーや個人経営店なども豆乳を製造・販売している。
かつては、三菱化成食品→三菱化学フーズ(ブランド名:マプロン)、明治乳業(ブランド名:サングロー豆乳)、日清サラダ油からも販売していた。
健康
高タンパク低カロリーな食べ物として認知され、大豆蛋白はコレステロール低下作用があるとされるため、健康飲料として利用されている。
豆乳は大豆イソフラボンが含まれ、ポリフェノール化合物の一種で、「植物由来エストロゲン」と呼ばれることもあり、体内で女性ホルモンのエストロゲンと同様の働きをし、これが骨粗鬆症予防効果、抗動脈硬化作用、更年期障害の緩和など健康にいいとされている。また、乳がんや前立腺がん等の予防にも効果があることが、疫学的な調査で明らかになってきており、特にイソフラボン配糖体のゲニステインという物質に、腫瘍の血管新生を抑える効果があり、それにより腫瘍の増殖を抑制するとする研究があり。さらに、大豆固形成分含量が高い豆乳には、血糖値改善効果が期待できるとの報告もあるピニトールという成分が多く含まれている。
乳糖不耐症や牛乳アレルギーで牛乳を摂取できない乳児に豆乳を与えることもあるが、アフリカ系アメリカ人1,553名を対象にした調査では、豆乳を乳児期に摂取した女性は、摂取していない女性と比べ初経後5年以内に月経痛で薬剤を飲んだ比率が20%高く、18~22歳で中等度または重度の月経痛を経験する比率が50%上昇した。
豆乳中のトリプシン・インヒビターのトリプシン親和性は、豆腐、味噌、きな粉などの大豆製品に比べて高いことが指摘されている。トリプシン・インヒビターを多く含むものを摂食すると消化不良を起こし下痢することがある。
適正摂取量および摂取上限について
日本豆乳協会・日本豆乳公正取引協議会は、適正摂取量について「一般的な推奨は一日当り200mlから600ml程度」としつつも、摂取上限については「特に制限はない」とし、他の飲料と同様に食事全体の健康バランスを考えることが重要であるとの見解を示している。
豆乳等の大豆食品に含まれる大豆イソフラボンの摂取上限について、2006年5月、食品安全委員会は「閉経前の女性における内分泌機能への影響」に鑑みて「特定保健用食品としての大豆イソフラボンの安全な一日上乗せ摂取量の上限値を 30mg/日とする」とした。もっとも、この文書が対象とする食品は、「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品及び特定保健用食品以外の錠剤、カプセル剤、粉末剤、液剤等の形状の食品を対象としたもの」「錠剤、カプセル剤、粉末剤、液剤等のうち大豆イソフラボンを濃縮、強化した大豆イソフラボンを摂取することを目的とした『いわゆる健康食品』」であり、豆腐や豆乳・おからクッキーを含めた「単に大豆素材を利用しただけのもの」は対象ではない。
あくまで大豆イソフラボンを濃縮・強化した食品が「大豆のイソフラボンとそれ以外の成分(たんぱく質、カルシウム等)とのバランスが、長い食経験を有する大豆食品とは異なって」 いるために指針が策定されたものであるからである。しかし、この報告書は一般の消費者には普通の大豆食品の大量摂取にも危険性があると誤解され、キッコーマン飲料の大島秀隆に拠れば、(工場の生産能力の頭打ちと合わせて)この誤解が豆乳の第二次ブームの終了に繋がったとされている。2017年時点でも、大豆イソフラボン単体の摂取目安量の上限が75mg/日であることを根拠に「(豆乳の)1日の摂取量目安は必然的に200ml程度」「実は豆乳はその効果の多さや高さから、過剰摂取すると体に悪影響を及ぼす飲料としても知られている」などと豆乳の過剰摂取の危険性を喚起するウェブサイトも存在するが、前述の通り誤解に基づくものであり、報告書は、通常の大豆食品の摂取については安全性が疑問視されたことはないこと、通常の大豆食品によって大豆イソフラボンの摂取量が75mg/日を超えたとしても直ちに健康被害に結びつくものではないことを、再三強調している。
