概要
語源
東欧ユダヤ人固有の言語イディッシュ語で「クレツメル」、英語「クレズマー」、最近はクレズマーと呼ぶ人が増えてきているもののクレッツマーと呼ぶ人も少なくない。語源はヘブライ語の「容器」(クリ)と「歌」(ゼメル)の合成語で、「楽器」が元の意味。音楽と、それを演奏する楽師の両方を指す言葉だが、当初は軽蔑的な意味を含んでいた。
起源と継承
起源は、中世ヨーロッパ、ルネッサンス期にまでさかのぼると言われる。ユダヤ教の結婚式で演奏される宗教的な器楽で、シナゴーグなど聖域で演奏された。旋律や音階は、ハザン(先唱者)の朗誦する祈祷歌に由来する。旋律は祭事で朗誦されるようなユダヤ教起源のものから、離散地の他の音楽文化から影響を受けたものまで様々である。クレズマーが発展したきっかけは、18世紀半ばに東欧で発祥したユダヤ教「ハシディズム(敬虔派)」において、特に歌い踊ることにより、神との合一(ドゥヴェクート)に至る手段として、音楽が重視されたことによる。東欧離散地のシュテットル(ユダヤ共同体)の結婚式において発展した。クレズマーは宗教儀式の結婚式のための神聖な音楽であり、楽しみのための世俗の音楽とははっきり区別される。19世紀から20世紀の世紀転換期にポグロム(反ユダヤ的暴動)が頻発したことで、多くの東欧ユダヤ人が米大陸へと移住するが、それに伴い、クレズマー音楽も新大陸へと活動の場を移した。東欧各地のクレズマー音楽は、ナチスによるホロコーストにより壊滅した。新大陸へと継承されたクレズマー音楽は、米国の音楽文化や商業主義の影響を受けつつ激変する。1970年代にはかつての伝統は影を潜め、世俗化・大衆化が進んで廃れたが、1970年代末にWalter Zev FeldmanやAndy Statdmanにより復興運動が興る。1980年代を通じて移民二世によるリバイバルが推進された。伝統的奏法の研究やワークショップによる普及活動が実を結び、1990年代には復活を遂げる。リバイバル初期のグループに、Frank LondonのKlezmatics、Alan Bern, Michael AlpertらのBrave Old Worldなどがある。
関連映画
- ノーマン・ジュイソン監督『屋根の上のバイオリン弾き』 - Fiddler on the Roof ※米国作品、1971年
- シュテファン・シュヴィーテルト(Stefan Schwietert)監督『キングス・オブ・クレズマー』 - A Tickle in the Heart ※ドイツ・スイス作品、1996年
