
名称
和名「アセビ」は漢字で「馬酔木」と書き、葉にグラヤノトキシンIなどの有毒成分が含まれることから、ウマが葉を食べれば毒に当たって苦しみ、酔うが如くにふらつくようになる木というところからついたとされる。「馬酔木」はアセビを指す漢字名として定着しているが、本来は別の植物だともいう説もある。
別名で、アシビ、アセボともよばれる。アシビは古名の一つで、アシミと呼ぶ地域がある事から「悪し実」ではないかとされる。または、「足しびれ」を由来とする説もある。地方名でヒガンノキともよばれており、春彼岸のころにアセビが花盛りで、仏前の供花にもされることに由来する。
学名の属名 Pieris (ピエリス)は、ギリシャ神話に登場する詩の女神の名前である。種小名の japonica (ジャポニカ)は、「日本の」の意味である。
分布
形態・生態





常緑広葉樹の低木から小高木で、樹高は1.5 - 5メートル (m) ほどになる。自生するものはかなり大きいものもあり、樹齢100年から200年になる老木も多く見られる。樹皮は褐色で、縦に細く裂けてややねじれ、ネジキに似る。若枝は緑色で、はじめのうちは毛があるが、のちに無毛となる。
葉は枝の先に束になって互生し、長さ3 - 8センチメートル (cm) の長楕円形から倒披針形で、葉縁には鋸歯がある。葉身は深緑色で厚い革質、表面に艶がある。芽吹きは赤く映えてよく目立つ。
花期は早春から晩春(3 - 5月)。早春になると枝先に10 cmほどの房になった円錐花序を垂らし、白い壷状の花を多数咲かせる。花は長さ5 - 6ミリメートル (mm) ほど。雄蕊は10本で、2個の角を持ち毛深い。なお、園芸品種には、ピンクの花を付けるアケボノアセビ(ベニバナアセビ)、花が上向きに咲くものにウケザキアセビがある。
果期は秋(9 - 11月)。果実は直径5 - 6 mmの偏球形で、秋に熟す。実や葉は有毒である。
冬芽は枝先に穂状につく。花芽は穂状で花期が近づくと目立ってくる。葉芽は卵形や円錐形で、多数の芽鱗に包まれている。葉痕は円形で維管束痕が1個見える。
ヒトとの関わり
アセビは、日本で庭木、公園樹として植栽されるほかに、花を咲かせる盆栽としても利用される。常緑の灌木で垂れる花房が美しく、虫がつかないことから庭園の植栽樹として重宝されている。暖かい地域では、道路の中央分離帯の植栽樹に使われることがある。
また、アセビが有毒植物である事を利用し、その葉を煎じてその液を植物に撒いて殺虫剤として利用されている。古くは葉の煎汁がシラミ、ウジ、菜園の虫退治に用いられた。そこで、アセビの殺虫効果を、自然農薬として利用する試みもなされている。
アセビの有毒成分として、グラヤノトキシンI(旧名アセボトキシン・アンドロメドトキシン)、アセボプルプリン、アセボインが挙げられる。中毒症状は、血圧低下、腹痛、下痢、嘔吐、呼吸麻痺、神経麻痺が挙げられる。
なお、ニホンジカが忌避する植物であるため、シカの生息密度が高く食害を受け易い森林では、アセビをシキミなど共に混植する試みが行われた事例も有る。
文学との関わり
アセビ属

アセビ属(アセビぞく、学名: Pieris)は、ツツジ科の属の1つである。世界に約十種が存在する。
- アマミアセビ Pieris amamioshimensis - アセビの亜種(P. j. subsp. amamioshimensis)とすることもある。リュウキュウアセビと同種とされていたが、2010年新種記載された。奄美大島に分布したが、園芸用の採取により、野生では絶滅したとされている。
- Pieris cultivars
- アメリカアセビ Pieris floribunda
- ヒマラヤアセビ Pieris formosa (Wall.) D.Don
- リュウキュウアセビまたはオキナワアセビ Pieris koidzumiana Ohwi - アセビの亜種(P. j. subsp. koidzumiana)とすることもある。沖縄本島に分布したが、園芸用の採取により、野生では絶滅したとされている。国指定の天然記念物に指定された生育地において、1983年に若木が1本確認されたのが最後の発見例である。
- アセビ(狭義) Pieris japonica (Thunb.) D.Don ex G.Don
- Pieris nana
- Pieris phillyreifolia
- Pieris swinhoei
- タイワンアセビ Pieris taiwanensis
